写真散歩
から

2012

(その4)

ここ飯室不動堂は、酒井大阿闍梨さまが守っておられるお寺です。毎月28日のお不動様の縁日には、護摩供養にこられる信者さんで賑わうそうですが、普段の日は、ひっそりとしています。

しばらく休憩していると、お寺の方が「お参りして行って下さい。」と勧めていただいたので、本堂で不動明王さまを拝ませていただきました。煩悩を断ち切るすさまじいお姿です。

寺伝によれば、「その昔、慈覚大師円仁上人がこの谷で修行をされておられたとき、弁才天の十六童子のひとり飯櫃童子(ばんきどうじ)が翁の姿になって、大師に食事を奉仕されました。その甲斐あって大師は不動明王を感得されて、修行を成就されました。その御姿を刻み、御堂を建てて奉られたのが、飯室不動堂のはじまり。」とされます。

本堂の隣に、慈忍和尚(じにんかしょう)のお墓があります。このお坊様は、天台座主も務められた高僧ですが、「亡くなってから一つ目一本足の妖怪に姿を変え、修行僧を戒め、悪僧や怠け者を次々と下山させたという、云々・・・・・」という伝説が残っています。この一つ目小僧の話は、学生時代の比叡山でのアルバイトの時に、聞いたことがあります。

ずっと忘れていて、お参りしたときも「どこかで聞いたようなお坊様のお墓だなぁ。」とは思っていたのですが、とくに案内板も無く、誰のお墓かもわからずに帰ってきました。ネットで調べてわかった次第。(ここまでお参りに来られる方には自明なんでしょうね。)

一つ目小僧になったお坊様も、今は千年杉の梢が日光をさえぎる谷間に、静かに眠っておられます。

東塔の総持坊の入り口に掲げられた、「一つ目一つ足の行者」の板絵
慈忍和尚の化身とされています。

飯室谷をでてまた、山道を西教寺に向けて歩きます。途中の木橋の踏み板が腐って今にも抜け落ちそうになってるところがあって怖かったです。

15分ほど歩くと、突然新興住宅地の中にでてきます。今までの山道とあまりに落差があって(笑)、道を間違えてしまい、途中で引き返すなどのハプニングありましたが、12時過ぎに西教寺に到着しました。

新興住宅地の片隅にまとめられた石仏さまや石塔群。おそらくこの丘陵地が開発されたときに出てきた石造物をここに安置したのでしょう。

それでも、前垂れをされて花も供えてあるところを見ると、近所の方か近くのお寺の方がお世話されているようです。

中には、「心無い人間がいて、形の良い石仏を庭石などとして持って行く者がいる。」とも聞きます。そのような行為には、必ずや仏罰が下ることでしょう。 (合掌)

西教寺の総門です。このお寺には、ずっと昔(まだ学生時代か社会人駆け出しの頃?)やはり、歩こう会に参加して来たような記憶がありますが、もう30年前後も前の事ですっかり忘れてます(笑) 今回が発参拝のつもりで参道へ入ります。

宗祖大師殿の唐門から眺める琵琶湖と下阪本の景色。この日は曇りでしたが、晴れた日はびわ湖の向こうの鈴鹿山地もくっきりと見えるのでしょう。

本堂です。季節外れのガクアジサイがまだ咲いてました。

江戸時代に紀州徳川家の寄進で建てられたもので、内陣には重文の丈六の阿弥陀如来さまが奉ってあります。

「真盛上人『身代わりの手白猿』」の像もあります。「室町時代の明応2(1493)年に坂本で一揆が起きた時、真盛上人が首謀者だと誤解した比叡山の僧兵が同寺に押し寄せたが、誰もおらず手白の猿が鉦を鳴らしていた。これを見た僧兵は日吉山王の使いの猿まで帰依していると感じ入り立ち去った。という伝承がある。」と説明されてます。

本坊と本堂をむすぶ太鼓橋のような橋廊下。地形のため斜めになったのは時々見ますが、下を通りやすくするためか、真ん中を高くしているのは珍しいです。

裏の客殿には狩野派の筆になる襖絵や小堀遠州作の山水のお庭があります。明智光秀夫妻の木像やゆかりの品も展示されています。

そのほかにも、二十五菩薩来迎の石像(阿弥陀様を中心に、楽器を持った菩薩様が極楽にお迎えに来られる様子を彫りだしています。)など、見るものは多いです。

面白かったのは、展示室に猿に関する展示があるのですが、「猿が入りますので扉をきちんと閉めてください。」と貼り紙があったことでしょうか。比叡山には野猿がたくさんいますが、それが仲間と勘違いして入ってくるのでしょうかねえ(笑)

最後に、本堂横の明智光秀とその妻や一族のお墓(供養塔)に参ります。

光秀は、信長の焼き討ちで焦土と化した坂本に城主として入城すると、このお寺の復興に努力しました。総門や鐘楼の鐘は坂本城の遺構と伝えられています。

光秀は、本能寺の変で信長を倒した後、三日天下で山崎の合戦で秀吉に破れ、山科の小栗栖で土民に殺されたと伝えられます。その遺骸は坂本へ運ばれ、菩提寺に葬られたのだそうです。

このあたりの話は歴史ファンならずとも興味の湧くところですが、深い詮索はやめておきましょう(笑)

このコーナーで使用しております背景のキノコのイラストは、素材集「ブルー・テイジー」よりお借りしたものです。無断転載はお断りします。

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